一過性全健忘

これは本当にあった怖くておもろい話です。
令和七年一月六日、冷たい雨の降り続く今年の仕事始めの日でした。夜7時頃、初老の私がらくなーるのパートナー運転手の仕事を終えて帰宅すると家内が台所でウロウロしていました。
晩御飯の用意も全くしてくれてないので「今から作ってくれるんかいな。遅いなあ、、、」と思ったのですが、小心者の私は黙っていました。

 

そうしたら家内の方から、「今日、何月何日?今日、私、何しとったん?」としゃべってきました。「今日は、1月6日で僕は仕事始めや。仕事に行っとったからあんたが何しとったか知らんわ。」と答えました。
そして5分も経たないうちに、また、「今日、何月何日?今日、私、何しとったん?」と聞いてきました。1時間に5回くらい聞いてきたと思います。晩御飯を作り出す気配もなく、ウロウロしたり、カレンダーをじっと眺めたりしていました。それでもまだ「しつこい演技やな」と思って真剣に取り合いませんでした。

 

でも、そのうちに「気持ちが悪くて吐き気がする。」と言い出したので、記憶喪失は私をおちょくっているにしても、本当に体調が悪いのかもと少しだけ心配になり、リビングのイスに座らせました。

「寒気がする」とも言い出したので、掛けるものを寝室に取りに行って戻って来たら、後ろ向きにカウンターにもたれるようにしてひっくり返りました。私はここでやっとこれは演技ではないと確信し、動揺し始めました。30秒くらい揺すって呼び掛けましたが目を閉じたままで反応ありません。
「死んでしもたらどうしよう。自分が真剣に取り合わなかったせいや。」と、人生最大の後悔、と同時に「非難されるやろから人には本当の事は言われへんな。」と、怖ろしい悪魔の心がわいてきました。

脳のパズルのイラスト

しかし、神様はいました。半分諦めながら揺すり続け、1分くらいした時に目を覚ましました。そして、その後しばらくしてほぼいつもの様子に戻りました。ただ、その日1日の記憶は戻らないようでした。

 

一応安心してから、ネット検索で調べ「これだっ!」と思うのを見つけました。「一過性全健忘」です。
翌日、通院したら、やはりそれのようでした。「精神的ストレスや身体的ストレス、過度の感情的興奮などが起因して起こる記憶障害で、発症前、発症中、および発症後にあった出来事の記憶が突然失われる病気。記憶障害は通常数時間で治まり、治療も不要で後遺症もない。ただ、発症時と前後の記憶は戻らない事が多い。」らしいです。

 

家内は数ヶ月前に亡くなった弟の事を、その子どもと電話で話している時におかしくなったようです。そしてやはり未だにその日の記憶は戻ってきません。脳の不思議さと自分の心の闇を実感した出来事でした。
(本部パートナー  吉永)

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