古くから理学療法の世界では「6か月の壁」という言葉があります。
中枢神経系の疾患によって麻痺が発症すると、その日から6か月の間のリハビリにより徐々に症状は改善するが、その先に残った症状はほとんど改善が見られない、というものです。
しかしここ数年の間、その考え方は改められ、脳内の回路の組み換えを促すようにリハビリを続けることで、6か月を過ぎても症状を改善させることができることが分かってきています。
このような状況で私たちマッサージ師は、直接リハビリにかかわることはあまりありませんが、患者さんをリハビリが受けやすい状態に体を整えるという重要な役割を担うことになります。
ある70代の女性は、3年ほど前に中枢神経疾患を発症し、約半年の入院を経て自宅に戻り、その時から私たちらくなーるマッサージを利用していただいています。
右片麻痺の後遺症があり、右手足に麻痺が見られ、肩関節と指に可動域制限がありました。
筋肉は「力が入らず思うように動かない」と訴える以外、震えや緊張などはほとんど見られませんでした。
マッサージの目標は、全身状態を整えつつ、肩・指関節可動域を徐々に広げていくこととし、治療を組み立てました。
今回は肩関節の治療についてお話します。
治療を始めたばかりの頃は、腕が外側に60度ほどしか上がらず、しかし周りの筋肉に強い緊張はみられませんでした。
そこで、肩鎖関節と上腕骨の間に「あそび」ができるように小さく関節を動かし、その後関節の周囲の筋肉をゆっくりストレッチしていきました。
2年近く掛かりましたが徐々に可動域は広がり、可動域はほぼ正常な状態に改善しました。
ご本人の努力はもちろん、この間のご主人の献身的なサポートも忘れてはいけません。
現在も麻痺があり、日ごろは肩関節を動かすことができないので、油断をすると可動域はすぐに狭まってしまいます。
マッサージを続けることで、現在の可動域を維持し、リハビリの成果が現れるのを待ちたいと思います。(蒲郡支店 吉見)